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広島高等裁判所 平成8年(行コ)6号 判決 1997年6月19日

広島県三原市沼田東町釜山一〇九七番地二

控訴人

日野邦治

広島県三原市宮沖町二四四番地

被控訴人

三原税務署長 髙地義勝

右指定代理人

内藤裕之

徳岡徹弥

表田光陽

河島功

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  控訴人の平成三年分の所得税の更正の請求に対して、被控訴人が平成五年六月二三日付でなした更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

三  被控訴人は、控訴人の平成三年分の所得税額を一一万二四〇〇円とする旨の更正をせよ。

四  被控訴人は控訴人に対し、八二万四八〇〇円を支払え。

第二当事者の主張

一  原判決二枚目裏二行目から七枚目表五行目までを引用する(但し、原判決四枚目裏四行目の「同3の事実のうち、」の次に「被控訴人の担当係官が、控訴人に対し、収支内訳書の添付を求めたこと、」を加え、五枚目裏一行目の「でないとに」を「でないことに」と、六枚目表四行目から六行目を「本件金員返還請求に係る訴えは、民事訴訟と解されるところ、当事者能力を有しない者に対する訴えであるから不適法である。また仮に右訴えが国税通則法五六条一項の過誤納金の返還を請求するものであるとすれば、行政事件訴訟法上の当事者訴訟に当たると解されるが、当事者訴訟における当事者能力は民事訴訟におけるとそれと同一であるから、いずれにしても不適法というべきである。」とそれぞれ改める。)。

二  当審における控訴人の補充的主張

1  被控訴人は平成四年六月二四日控訴人の平成二年分の所得税の更正をしており、その関係で、控訴人が本件更正請求をした平成五年二月八日当時、控訴人の貸金関連の全ての資料を収集して保持していたから、控訴人は被控訴人に対し「それらの資料で確認して欲しい」と要望してきたのである。

2  控訴人は昭和六〇年以降貸金業を営んでいない。従って事業のための帳簿類は当初から存在せず、事業外の貸金については貸付時に借用書を受取り弁済受領時に借用書を返せば充分であるので帳簿等は必要がなく、帳簿等の存在しないことは不自然ではない。

3  事業所得であるか一時所得であるかにより、地方税に影響がある。

理由

一  原判決七枚目表九行目から一〇枚目裏九行目までを引用する。但し次のとおり付加訂正する。

1  原判決七枚目裏七行目から八行目の「事前審査を認めないことによる」を「行政庁の義務違背による」と、八枚目表二行目の「これに不服があれば」を「これが容れられない場合は」とそれぞれ改め、八枚目裏三行目の「このような訴えは、」から同五行目までを「右は民事訴訟もしくは行政訴訟の一類型としての当事者訴訟に当たると解されるところ、被控訴人三原税務署長は、右金員の返還につき国の一機関として権利義務の主体とはなりえないのであるから、これを相手方とする右の訴えの提起は許されない。」と改める。

2  原判決九枚目裏五行目の「個人的な」の前に「平成二年までは貸付金に係る利息収入があったが、平成三年はない、平成三年には個人的知り合いに対する無利子の貸付金はあるが、貸金業としての貸付金はない旨述べるとともに、」を加え、同六行目の「つもりはないと」を「つもりはない旨」と、同九行目の「無利息で貸し付けるというものである」を「平成二年三月に貸付け、平成三年一月ころ一億五〇〇〇万円の返済を受けて、残金一億一〇〇〇万円は元本のみの返済を平成四年に受けた、右一億一〇〇〇万円の返済状況については言えない」とそれぞれ改める。

二  控訴人は当審において、竹野に対する貸金の借用証書と弁済金の内訳明細を記載した「計算書」の写しを、被控訴人が、控訴人の平成二年度の所得税に関する税務調査により取得したとして、また訴外森川忠亮が被控訴人に提出した平成二年度の所得税確定申告書に控訴人からの借入の金銭借用証書の写しを添付しているとして、文書提出命令を申し立てたが、自らはより直截な資料の呈示を拒んだまま、これらの文書の提出を求めることは相当でないばかりでなく、前記認定(原判決引用)のとおり、原審及びそれに先立つ本件更正請求に対する調査、異議審理、国税不服審判所での審理経過に照らして、時機に後れた攻撃防禦方法であるから、これを採用することはできず、控訴人の当審における補充的主張を勘案しても、右判断(原審引用)を左右するに足りない。

三  よって本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 東孝行 裁判官 菊地健治 裁判官 西垣昭利)

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